【第10章】
The House of Gaunt
ガウントの家
その一

ハリーはその後魔法薬学では、教科書ではなくプリンスの書いた指示に従って調合し続けます。そのお陰でハリーの得意科目は闇の魔術の防衛術から魔法薬学へと変わります。
 面白く思わないのはハーマイオニー。彼女はどんなにハリーが勧めても、断固として教科書の‘公式の’指示に従います。ハリー、ロン、ハーマイオニーはこのプリンスの正体が誰なのか気になり始めますが手がかりはゼロ。各教科で莫大な量の宿題が出ていたこともあって、プリンスが誰なのかの討論はいつも中途半端で終わってしまいます。

 そして、今日は土曜日。ダンブルドアとの初めての個人授業の日です。
ハリーは8時5分前にロン、ハーマイオニーと分かれて1人校長室に向かいます。
 校長室に向かう廊下でハリーはトレローニーを見かけ、とっさに隠れます。彼女はトランプを持ってぶつぶつ言いながら歩いています。
 「スペードの2・・戦い、スペードの7・・不吉な前兆、スペードの10・・暴力、スペードの11・・依頼者の嫌いな元凶の少年・・・」と占いながら去っていきました。この占いの意味は・・・?
 
 ハリーは校長室に到着。ダンブルドアの部屋にはいつものように細かい器具が並び、特に何かの練習をするために部屋を片付けた様子はありません。
 そわそわしているハリーにダンブルドアは、個人授業の目的はヴォルテモートがなぜ躍起になってハリーを殺そうとするのかを探ることだと言います。事実の固定観念から抜け出し、人の記憶の中を旅してヴォルテモートの過去を知り、想像を働かせて彼の本当の考えを探り出そうと言います。
 ダンブルドアはペンシーヴを出してきて魔法法令執行局長だったボブ・オグデンの記憶を中に注ぎます。そしてハリーとダンブルドアの2人は彼の記憶の中へ・・・


<ボブ・オグデンの記憶の中>
 オグデンは変てこなマグルの衣装(ストライプの全身水着の上にフロックコート!)を着た背の低い丸々太った男で、高い生垣に囲まれた田舎道に1人立っていました。
 彼は道端の標識を見て、‘リトル・ハングルトン’と言う村の方向へと歩いていきます。
村が見えてくると彼は道をそれ、林の中へと進み、高い木に囲まれた薄暗い林の中にボロ小屋を見つけます。誰も住めないと思われるほどボロボロの家でしたが、開いた窓からは煙や蒸気が出ていて、入り口のドアには蛇の死骸が打ち付けられていました。
 オグデンが入り口のドアに近付こうとすると、木の上から男が降ってきました。
その男は片手にナイフ、もう片手に杖をかざし「ここはお前の来るところではない。」と言います。しかしオグデンは彼の言っている事が聞き取れない様子。ハリーにははっきり聞こえたので不思議に思っていると、その男はパーセルマウスで話していたのです。
 男はオグデンに何か呪文を掛けて、オグデンの鼻から黄色い膿のような物が出てきて止まらなくなります。そこに「モルフィン!」と声がしてもう一人年配の男が家から出てきます。
 年配の男とモルフィンと呼ばれた若い男は親子で、どちらもボロボロの服を着ていて髪の毛もぼさぼさです。年配の男をオグデンはガウントさんと呼んでいました。
 モルフィンがマグルの前で違法に魔法を使ったため、魔法省からオグデンがこの家にやって来たようです。オグデン、モルフィン、ガウントの3人は家の中へ。ハリーとダンブルドアも着いて行きます。
 狭くて汚い家の中にはもう1人ガウントの娘、メロウプがいました。メロウプはスクイブだそうで、父親や兄と同じようにボロ布を着て陰気な顔立ちでした。
 オグデンがモルフィンは魔法省の尋問会に呼び出されていると話すと、ガウントは激怒します。ガウントはオグデンに2つの物を見せて、自分達は古くから続く純血の一族だと主張します。
 ガウントが見せた2つの物とは、黒い石に紋章が彫られた金の指輪と、スリザリンの金のロケットでした。ガウント家はサラザー・スリザリンの最後の子孫にあたるらしく、ガウントはその証としてこの2つの者をオグデンに見せます。
 「分かったらさっさと帰れ!」と言うガウントにオグデンは「先祖が誰であっても違法は違法だ」と反論します。