【第十二章】
銀とオパール
Silver and Opals
その一
ハリーは次の2週間でダンブルドアの姿を2〜3回しか見ませんでした。食事のときも現れないし、相当忙しいようです。個人授業のことは忘れられてしまったのかと少し見捨てられたような気がしてきます。10月も中旬になり、今年最初のホグズミードへの旅の日になりました。ハリーはその日の朝かなり早く目が覚め、ベッドの上でプリンスの教科書を読むことにします。教科書には薬の調合の仕方もたくさん書いてありましたがそれ以外にも、プリンスが自分で考え出したと思われる呪文や呪いの言葉もたくさん書いてありました。
例えば、足の指の爪が驚異的に早く伸びる呪文。(ハリーはクラッブにこの呪文を試してみた。面白い結果になったらしい。)舌が上唇にくっ付いてしまう呪文(これはフィルチに2度使ってみた。結構便利のようです。)そして一番便利だったのが、マフィリエート。これは近くにいる人の耳に雑音が聞こえるようにする呪文で、これを使えば授業中でも誰にも聞かれずにお喋りが出来ました。
教科書を読んでいると、‘レヴィコーパス(無言)’と言うメモを見つけます。(無言)とは無言呪文のことだろう。ハリーは未だに無言呪文をうまく掛ける事が出来なかったが、それが何の呪文か気になり、適当に杖を構えて頭の中で‘レヴィコーパス!’
と頭の中で唱えてみます。
「わーーーーーー!!」閃光が走り、部屋の中にはロンの悲鳴が響き渡ります。
ロンは何かに吊られているように、上下逆さまになって宙に浮いてしまったのです。ハリーは慌てて教科書をめくり、解除の呪文を探します。さっきの呪文の下に書いてあった呪文を唱えるとロンがベッドの上にドスンと落ちました。
ロンはこの呪文が面白いと思ったらしく、朝食の時ハーマイオニーに嬉しそうに話します。
ハリーはこれと同じ呪文を、昔父親のジェームスがスネイプに掛けていたのを思い出し、もしかしたらプリンスはジェームスかもと考えますが、彼は純血だったことを思い出します。そしてハーマイオニーは、クィディッチのワールドカップの時に死喰人達が同じ呪文を使っていたと言い出します。
そこにジニーがハリーへの手紙を預かってきたと言って現れます。それはダンブルドアからの手紙で、次の個人授業を月曜の夜に、と書かれていました。
彼に見捨てられていなかったと分かったハリーは幸せな気分になり、そこにいたジニーに「一緒にホグズミードに行こう」と誘いますが、ィーンと行くからむこうで会いましょう、と言ってあっさり断られます。
朝食の後3人はホグズミードへ。ホグワーツの入り口ではフィルチが入念に全員の持ち物検査をしています。どうやらホグワーツには、危険な物を持ち込むことも、持ち出すことも難しいようです。
外に出ると、強い風と雪で歩くのも辛い天気でした。やっとの思いでホグズミードに着くと、ゾンコのいたずら専門店は板張りして閉まっていました。
がっかりした3人はハニーデュークへと向かいます。ハニーデュークは営業していて3人は中へ。するとスラグホーンに出くわします。彼は好物なのか、パイナップルの砂糖漬けの馬鹿でかい紙袋を両手一杯に持っています。
ハリーに何度も自分のパーティーに来てくれと言い残して彼は去っていきます。
スラグホーンに存在を無視され続けるロンはここでまた不機嫌になり、なんとなく暗い雰囲気になった3人は、今度は三本の箒に移動します。