【第十四章】
フェリックス・フェリシス
Fwlix Felicis
その二

 練習を終えたハリーとロンは更衣室から談話室に戻るために、タペストリーの後ろに隠れた近道を通ろうとします。するとそこで・・・ジニーとディーンがキスをしていたのです。そしてロンとジニーが激しい兄妹喧嘩を始めます。
)「俺は自分の妹が人前でキスするのなんて見たくない!」
)「あなた達2人がここに来るまで周りに誰もいなかったわ!」杖まで出してきて激しく喧嘩する2人を目の前に、ハリーの頭の中は混乱します。
ハリーはジニーとキスをするディーンを見て頭にかっと血が上り、ディーンに呪いを掛けたい衝動に駆られます。
 「自分に彼女がいないから誰かがいちゃついてるのを見ると腹が立つんでしょ!ハリーはチョウと、ハーマイオニーもクラムと付き合ってたし!」と言うジニーの言葉にロンが爆発。杖を振りますがジニーは走って逃げました。
 ハリーとロンはその後談話室に戻りますが、あまり話もせずにそれぞれの思いを胸にベッドに入ります。
 ハリーはベッドに入っても眠れません。天蓋を見つめジニーへの感情は兄妹の様なものだと自分に言い聞かせます。夏休みの間ずっと兄と妹のように楽しく過ごしてきた。ジニーと知り合ってもう何年にもなるし、守りたくなるのは当然だ。彼女と一緒にいたいと思うのも当然だし、彼女とキスしていたディーンを八つ裂きにしたいと思うのも・・・ハリーは自分の気持ちをコントロールするのに必死でした。
‘ジニーはロンの妹だ。ロンの妹だから恋愛対象外だ。’
 いつまでたっても眠れず、ハリーはもうジニーのことは考えずに眠ろうと努力します。

 翌朝ロンはジニーにだけではなく、ハーマイオニーにまで冷たい態度を取ります。ロンはハーマイオニーとクラムがキスをしたのかどうかが気になって仕方ないようです。
 ロンの不機嫌は何日たっても治まらず、もちろんクィディッチのプレーにも影響してきます。練習中ロンは他のメンバーに怒鳴りまくり、試合前の最後の練習の時にはデメルザ・ロビンを泣かせてしまい、チームの雰囲気は最悪に。
あまりにひどい態度にハリーが怒ると、ロンは今度はひどく落ち込んでしまいます。
 ハリーは試合前夜ベッドに入り、どうすればロンを絶好調に出来るか考えます。
そしてある素晴らしい考えが頭に浮かびます。

 翌朝、ハリーとロンが朝食のために大広間に入るとグリフィンドールテーブルからは激励が、スリザリンテーブルからはブーイングが飛び交います。
 テーブルに着くとハリーはやたらとロンに飲み物を勧めます。そしてそこにハーマイオニーがやって来ます。ハリーがロンにパンプキンジュースを渡すとハーマイオニーは「飲んじゃだめ!」と言います。「私ハリーがそのジュースに何か入れたのを見たわ。ハリー、手に持ってる小瓶を出しなさい!」ハリーは小瓶をすぐポケットに隠し、ロンはハーマイオニーの忠告を無視してジュースを一気に飲み干します。ハーマイオニーはハリーに「退学になるわよ」と言って立ち去りました。

 ハリーとロンがスタジアムに向かうと、外は雲ひとつ無い快晴です。更衣室に入るとジニーが嬉しいニュースを運んできます。
 スリザリンのチェイサーのヴェイシーが練習中に怪我をして出場できないと言うのです。さらにマルフォイも病気のため欠場すると。マルフォイの欠場を聞いたハリーは怪しみます。かつて本当にマルフォイが怪我をした時
は彼の都合のいいように試合の日程を変えられた。今回はクィディッチより何か大事な用事でもあるのだろうか・・・?
 あまりにも幸運が重なるロンは、自分にフェリックス・フェリシスを飲ませたなとハリーに問いただしますがハリーは黙ってピッチへと行ってしまいました。