【第十六章】
凍りつくようなクリスマス
A Very Frosty Christmas
その二

 ハリーはルーピンに最近何をしていたのか訊ねます。ルーピンはずっと同類と一緒に身を隠していたと答えます。ルーピンの同類、つまり狼人間達は世間から遠ざけられ、盗みや時には食べるために人を殺して極限状態で生活しているそうです。そのため少しでもましな生活を求めてヴォルテモート側に付く者が多く、ダンブルドアはルーピンをスパイとして彼らの中に送り込みどのくらいの数がヴォルテモートに付いているのか情報を得ようとしているそうです。そして出来ることなら、狼人間のボス的存在であるフェンリア・グレイバックを説き伏せようと考えているようです。
 グレイバックは今存在する狼人間の中で最も残忍な男で、出来るだけ多くの人を噛んで自分達の仲間を増やし、いずれは魔法使いを支配するのに必要な数の狼人間を造りだそうとしているのです。ヴォルテモートは彼に、自分の為に働いた見返りに獲物を与えると約束したそうです。
 また、グレイバックは子供を好んで噛み、出来るだけ小さい子供を噛んで両親から奪い取り、普通の魔法使いを憎むように育て上げるそうで、ルーピンを子供の頃に噛んだのもこのグレイバックだったと話します。
 ハリーは混血のプリンスについてもルーピンに訊ねます。ロンに掛けてしまった‘レヴィコーパス’の呪文の話をすると、ルーピンの学生時代に流行っていたと彼は懐かしがります。ハリーは父親のジェームスや名付け親のシリウスがプリンスだったらと期待していたのですが、ルーピンはそのどちらでもないしプリンスと呼ばれていた人を聞いたことが無いと話します。
 「どのくらい前の本なのかが分かれば・・・」とルーピンが言ったのでその夜部屋に戻るとハリーはすぐに本を調べます。するとその本が出版されたのは50年も前のことでした。50年前は、ジェームスもシリウスもホグワーツにはいなかった・・・がっかりした気持ちでハリーは眠りにつきました。

 翌朝目覚めると、ロンにもハリーにもクリスマスプレゼントが置いてあり、ロンのプレゼントの中には、ラベンダーから‘My Sweetheart'とメッセージの入った金のネックレスが入っていました。
 「こんなのみんなの前で付けられるわけがないよ・・・」と言ってロンは
そのネックレスを枕の下に押し込んでしまいました。
 ハリーへのプレゼントは、ウィーズリーおばさんからの手編みのセーター
(今回の柄は金のスニッチでした)、フレッドとジョージからはいたずら専門店の商品(何が入っていたかは書いていなかったと思います)、それにクリーチャーから箱一杯のうじ虫でした。
 2人が昼食に降りていくとフラー以外はみんな新しいおばさん手編みのセーターを着ていました。おばさん、フラーには編んであげなかったようです・・・。
 その時ジニーがハリーの髪についていたうじ虫を取ってくれました。ハリーはうじ虫に関係無く、ジニーの触れた首筋に鳥肌が立つのを感じます。
 みんなで食事をしていると、突然ウィーズリーおばさんが窓の外を指差して立ち上がります。するとそこには、こちらに向いて歩いてくるパーシーがいたのです。しかし彼は一人ではありませんでした。魔法省大臣のスクリムジャーと一緒に歩いていたのです。
 パーシーがドアを開け姿を現すと、おばさんは涙ぐんで彼に抱きつきます。スクリムジャーは、「パーシーがどうしても家族に会いたいと言うので仕事で近くに来たから立ち寄った。忙しいので5分ほどしかここにはいられない。」と話します。しかしパーシーは何も言わず、家族に挨拶もせずに表情ひとつ変えないでただそこに立っていました。
 スクリムジャーは「中に入って食事を」と勧めるおばさんの誘いを断って庭を散歩したいと言い、案内役にハリーを指名します。このことでテーブルの周りの空気が一転しました。みんな、パーシーが家族に会いたがった、というのは嘘で、スクリムジャーがハリーと話をしに来ただけだと勘付いたのです。