【第18章】
思いがけない誕生日
Birthday Surpris
その一
次の日、ハリーはまだ喧嘩中のロンとハーマイオニーにそれぞれ別々にダンブルドアの個人授業の内容と自分に課された宿題のことを話します。
ロンは、スラグホーンはかなりハリーのことを気に入ってるのだから聞くだけですぐに記憶のことを教えてくれるんじゃないか、と楽観視します。
しかしハーマイオニーは、ダンブルドアでさえその記憶を聞きだすことが出来なかったのだから、スラグホーンは何があっても隠し通すつもりだろう。
それを聞き出すためには何か秘策が必要なのでは、と言います。
ハリーはホークルクスについてハーマイオニーなら何か知ってるのではと期待していたのですが、どうやら彼女も何も知らない様子です。
その日3人は魔法薬学の授業を受けます。
その日の課題は、とても調合の難しい解毒剤でした。その薬のことを知っているのはちゃんと教科書を読んで予習しているハーマイオニーだけで、他のみんなは薬に関するスラグホーンの説明を聞いているのか聞いていないのか・・・といった状態です。スラグホーンの合図でみんな調合に取り掛かりますが、何をどうしていいのかさっぱり分かりません。
しかも、ハーマイオニーの無言呪文の腕前はかなりのものになっていて、何も言わずに杖を振って薬を作っていくので、真似をしたくても出来ません。
ハリーはプリンスの本を開きますが、解毒剤のページには何も書き込まれていません。これではもうお手上げです。
授業中に巡回してきたスラグホーンはハリーの大鍋を期待して覗き込みましたが卵の腐ったような匂いに咳き込みながら顔をしかめます。ハリーはスラグホーンの自分に対する好感が音を立てて崩れていくのを感じます。
ハリーは諦めかけて、目的も無くプリンスの本をペラペラとめくってみます。すると、たくさん書かれた解毒剤のリストの横に走り書きで、‘べゾアールを口に押し込む’とかかれていました。ハリーは記憶の糸をたどり、1年生の時スネイプが授業で「ヤギの胃から取った石;ベゾアールは何より効果的な万能の解毒剤だ」と言っていたのを思い出します。
授業の残り時間はあとわずか。ハリーは急いで薬品棚に向かいます。棚のいちばん奥にそれを見つけると一粒握り締めて席に戻ります。そこで「終了!」とスラグホーンが叫びます。
クラスで誰一人薬を完成させたものは無く、ハーマイオニーでさえ工程の半分しか終わっていません。結果をチェックしに来たスラグホーンにハリーは掴んでいたベゾアールを差し出します。
するとスラグホーンはまたもや「確かにベゾアールはどんな毒に対しても解毒剤の役割を果たします。そのひらめきこそが真の薬作りに必要な発想力です!」と言ってハリーを褒め称えます。
終業の鐘が鳴るとみんなさっさと教室を出て行きました。ハリーはわざとゆっくりと帰り支度をして、スラグホーンと2人きりになります。
そしてスラグホーンに‘ホークルクス'について訊ねます。すると、それまでにこやかだったスラグホーンの顔から笑みが消え、「ダンブルドアに頼まれたんだな」と言います。ここは嘘をつくべきではない、と思ったハリーは正直にはい、と答えます。ホークルクスなんて知らない、と言うスラグホーンにハリーは「あの記憶にはまだ隠されてることがありませんか?」と聞きますがそんなものは無い!と怒鳴ってスラグホーンは教室を出て行きました。