【第22章】
埋葬の後で
After The Burial
その1

 ホグワーツの空に青空が垣間見えるようになり、夏が近付いてきますがハリーの心は晴れません。必要の部屋は開けられないし、スラグホーンの記憶は手に入れられないからです。
 ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人はある日の昼食の後、穏やかな中庭に座っていました。そこに知らない女の子がハリーに手紙を届けに来ます。ダンブルドアからだと思って開けてみると、それはハグリットからでした。
 文字は乱雑に書かれ、羊皮紙には大きなインクの染みがあり、とても読みにくい物でした。そこには、‘昨夜アラコグが死んだ。今夜埋葬するので、マントに隠れて来て欲しい。こんなこと頼むべきではないが、とても一人では耐えられない’と書かれていまし。
 ロンは自分とハリーを食べようとした奴の葬式に行くなんて!と言い、ハーマイオニーは夜に城を出るなんて危険なことすべきではない、と言います。
 ハリーは羊皮紙の染みを見て、きっとハグリッドのこぼした涙の跡だろうと思うと行ってあげたくなるのでした。
 ハーマイオニーは、その日の午後殆どの生徒が姿現しのテストの為魔法薬学の授業に出られないので、ハリーがうまくやれば、記憶を手に入れられるかもしれないと言い出します。「運が良ければね」とハリーが言うと、ロンが何かを思い付きます。
 フェリックス・フェリシスを飲んでスラグホーンに会いに行けばいい、と言い出したのです。ハーマイオニーもロンのその提案に賛成しますが、ハリーは乗り気ではない様子。もう少し大事なことに・・みたいなことを言うと、記憶を手入れること以上に大事なことなんてないわ!とハーマイオニーに喝されます。
 結局、午後にスラグホーンに会って、だめだったら夜にもう一度フェリックスフェリシスを飲んで彼に会いに行こう、ということになります。
 3人がそんな話をしていると、近くをモントゴメリィ姉妹が通りかかります。彼女達の弟は、両親が死喰人の要求を断ったために人狼に襲われ、たった5才なのに亡くなってしまったそうです。そしてやはりその子を噛んだのはグレイバックだった、とハーマイオニーは言います。こんなにたくさんの恐ろしい事件が起こっているのだからやはりすぐにフェリックス・フェリシスを飲んで記憶を手に入れ、全ての事件の原因であるヴォルテモートを早く止めなくては!とも言いました。
 そしてロンとハーマイオニーは姿現しのテストを受けに行ってしまいました。ハリーは一人で魔法薬学の授業に向かいます。
 その日の授業に来ていたのは、ハリー、マルフォイ、アーニーの3人だけでした。みんなまだ17才になっていなくて、試験が受けられない人ばかりです。
 マルフォイは、ホグワーツ特急の中でみんなに、興奮しながらヴォルテモートから命令を受けたことを自慢気に話していた傲慢さは全く消え去り、顔色も悪く少し痩せたようでした。ハリーは、きっとその企みがうまくいっていないのだろう、と思います。
 その日の授業は、何でも好きな薬を調合するようにと言われます。
 ハリーはプリンスの本にざっと目を通し、プリンスバージョンに大幅に修正されたAn Elixir to Induce euphoria(多幸感誘発剤?)を見つけ、作り出します。
 1時間半後、スラグホーンは薬の出来具合をチェックして回り、やはりハリーの薬をべた褒めします。ハリーは今がチャンス!とスラグホーンに話し掛けますが、彼は終業の鐘と共に、急いで教室から出て行ってしまいました。

 その日の午後遅く、ロンとハーマイオニーが談話室に戻ってきました。ハーマイオニーは見事合格したそうです。ロンは残念ながら、片方の眉毛を置き去りにしてしまい、不合格でした。